VBMEGユーザーズミーティング2023

主旨

電流源推定法は、脳波/脳磁図データから脳内の電流活動を再構成・可視化する方法です。
近年、サブ秒の速い時間スケールで変化する脳活動を非侵襲的な方法で可視化する方法として、基礎研究・臨床研究で活用が進んでいます。
しかし、電流源推定法を正しく利用するためには、計測・アルゴリズムに関するさまざまな専門的知識およびデータ解析経験が必要となります。

電流源推定法の有用性や課題を共有し、解決策やよりよい活用方法を議論するために、VBMEGユーザミーティング2023を開催します。

2部構成からなり、前半はVBMEG開発グループから講義、シミュレーションを焦点にあてたチュートリアルを実施し、後半は電流源推定に関連する研究(VBMEGに限らない)を行っている研究者・学生の研究発表・討論を行う研究会スタイルの会としたいと思います。

対象:学生(修士以上)、研究者、電流源推定にご興味をお持ちの方

プログラム

日時:
2023年9月16日(土)9:30〜

場所:
オンライン@Zoom
一部セミナーをVBMEG YouTube チャンネルで公開しています。是非ご覧ください。

2023年9月16日(土)

 

9:30〜10:15
電流源推定法入門  YouTube
山下宙人
ATR 脳情報通信総合研究所 脳情報解析研究所 計算脳イメージング研究室・室長
電流源推定法は、非侵襲な計測方法にもとづいて、ミリ秒の間に変化する脳活動を可視化する唯一の方法であり、ヒトを対象とした脳機能研究において活用が進んでいます。電流源推定法は順問題、逆問題を含む複雑な計算処理を必要としますが、その過程を学ぶ機会はあまり多くありません。1年前のユーザミーティングでは、『電流源推定法概論』というタイトルである程度細かい部分まで紹介しましたが、今回のトークでは30分程度に短くまとめたダイジェスト版をお話します。
10:30〜12:15
チュートリアル:VBMEGを用いた脳磁図シミュレーションデータの作成
YouTube
鈴木啓大
ATR 脳情報通信総合研究所 脳情報解析研究所 計算脳イメージング研究室・専任研究員
多岐に渡る選択肢の中から,研究の目的に応じたデータ解析方法を吟味して選び出すことは,とても難しい問題です.
特に自分で新しい手法を開発する場合は,提案手法がどのような条件のもとで有効に動作するのか,既存の手法と比較して評価する必要があります.
このような評価を正確に行うための鍵となるのが,真の答え(ノイズが全く含まれていない観測信号や電流源パターンなど)が既知であるシミュレーションデータの生成です.
このセッションでは,実際の研究におけるシミュレーションデータの使用例を紹介した後,基本的なVBMEG関数を使用したシミュレーションデータの作成とその評価方法をご紹介します.

このセッションでは,実際に参加者のmatlab上でVBMEGのプログラムを実行していただきます.
チュートリアルプログラムの実行には,matlab実行環境とチュートリアルデータの事前ダウンロードが必要です.(チュートリアルデータ準備ページのリンクは2023年9月11日に参加登録者にメールにてお知らせいたしました。メール不着の方は下記問い合わせ窓口までお知らせください。12日以降に参加ご登録の方は随時メール送付致します。)
問合わせ窓口 cbi-info[at]atr.jp *[at]を@に置き換えて送信下さい。

=休憩=

13:00〜13:30
聴覚誘発磁界のtopographyによる遷延性意識障害患者の脳活動の観察
池亀由香
中部脳リハビリテーション病院・中部療護センター 脳神経外科 医師
【目的】聴覚誘発磁界(AEF)検査では、本来は等価電流双極子(ECD)法にて一次聴覚野(A1)にECDが検出される。当院の交通外傷後遷延性意識障害(DOC)患者の検査では、A1にECDが検出されない例でも波形に複数のpeakが出現し、潜在的な脳活動が疑われた。本検討では、A1に全くECDが検出されなかった8例(平均51.1±15.8歳;受傷後平均16.8±10.3ヶ月経過)を対象にtopographyを用いて脳活動を観察した。【方法】AEFは306ch全頭型脳磁計(Neuromag)で測定し、トーンバースト音による片耳ずつの刺激で200回加算平均した。MaxfilterをかけたgradiometerのAEFデータをBrainstormにて信号強度の変化につきtopography表示した。【結果】時系列表示では、最重症群でも側頭部だけでなく前頭部や頭頂部など複数の領域で信号上昇域がdynamicに変遷していく様子を認めた。周波数帯域別表示では高周波帯域でも信号上昇を認めた。臨床的には反応検知困難なDOC状態でも音刺激により脳内で多彩な信号が発生する可能性があることが示唆された。
13:30〜14:00
作業記憶課題遂行時の脳波の電流源推定
森重健一
富山県立大学 工学部 知能ロボット工学科 講師
ヒトは数字や記号などを一時的に記憶する(作業記憶)ことができるが、記憶した情報が脳内でどのように符号化され、そし保持されているか、いまだ明らかではない。本研究ではVBMEGを用いてn-back課題遂行中の脳波データから皮質電流とアーチファクト源の電流を同時に推定し、その影響を分離することで歪みの少ない皮質電流を得た。さらに電流レベルでのグループ解析を行うとともに、Sparse Logistic Regressionを用いて識別を行うことで作業記憶の実現に関係のある皮質領域に絞り込んでその関係を調べた。これらの結果から、記憶の符号化や保持に関する表現はベータおよびガンマ帯域のスペクトル特徴および持続的なニューロン活動の両方が寄与している可能性を示す。

=休憩=

14:15〜14:45
狙った脳部位の活動を高精度に推定するための光ポンピング磁力計のセンサ配置設計   YouTube
武田 祐輔
ATR 脳情報通信総合研究所 脳情報解析研究所 計算脳イメージング研究室・主任研究員
光ポンピング磁力計(Optically Pumped Magnetometer, OPM)は、小型で軽量なため、脳波のようにセンサ付きキャップをかぶることで、自然な状態でそして高い感度で脳活動を計測することができる。そのため、従来の大型な装置に代わる次世代の脳磁図計測装置として期待されている。一方で、センサを購入後、自分たちでキャップを作ったり、センサの位置を決めたりする必要がある。特に、所有するセンサ数が少ない場合には、関心領域に応じて注意深くセンサの配置を決める必要がある。本研究では、光ポンピング磁力計のセンサ配置を設計する手法を提案する。提案手法では、最小ノルム法の解像度行列を基に、関心領域の脳活動を高精度に推定できるようにセンサ配置を最適化する。提案手法の有効性を、シミュレーションデータと実OPMデータを用いて検証した。結果、提案手法は、ブレイン-マシン・インタフェースや脳の病気の診断など、狙った脳部位の活動を少数センサで高精度に推定したい場合に、特に有用であることが示唆された。
14:45〜15:15
体性感覚誘発電位の研究における信号源推定の有用性
小澤勇介
東京工業大学 博士後期課程3年
感覚神経の刺激により、体性感覚誘発電位(SEP)が刺激と対側の一次体性感覚野(S1)に誘発される。SEPは20 msや25 msなど、複数の潜時に誘発され、それぞれの成分が極性を持ち、潜時と極性に応じてN20, P25などと呼ばれる。SEPの中でもN20は中心溝を境目に後方の領域では極性がマイナスであり、前方の領域では、極性がプラスになることが知られている。これまでのヒトでSEPの計測を行った研究では、S1付近に置かれた電極のみで条件ごとのSEPを比較しているなど、多くの研究では全脳については調べられていない。SEPに関する様々な脳機能のメカニズムの解明のためには、より幅広い脳領域を調べることが有意義である。しかし、信号源推定の有用性を確認するためには、信号源推定によるSEPが、これまでの知見と同様の傾向になることを確認する必要がある。本研究では、全脳の頭皮電極からの脳波計測および信号源推定を行い、S1でSEPが計測できることおよび、前方の領域での極性の反転を確認した。

=休憩=

15:30〜16:00 質疑応答 
事前に頂いた質問、その他の疑問にお答えします。

演題登録・参加登録

演題を募集しています。
一演題発表時間25分 (15分発表、10分討論) を目安とした演題を募集します。電流源推定に関連する研究であればなんでも構いません。研究者・学生問わず、皆様からの演題登録をお待ちしております。氏名・所属・タイトル・要旨(全角400文字程度)を下記VBMEGユーザーズミーティング登録フォーム(Googleフォーム)から記載お願い致します。

演題登録期間:2023年7月31日(月)~ 2023年9月4日(月)9:00 am
~2023年9月11日(月)9:00 am
※演題登録終了しました

参加者を募集しています。
下記VBMEGユーザーズミーティング登録フォーム(Googleフォーム)よりお申込みください。

参加登録期間:2023年7月31日(月)~2023年9月14日(木)9:00 am
~2023年9月15日(金)5:00 pm
※参加登録終了しました。

VBMEGユーザーズミーティング登録フォーム

当日のZoomリンクは 2023年9月15日(金)午後5:00頃にメールにて参加登録者にお知らせいたしました。未着の場合は下記問い合わせ窓口までお知らせください。

問合わせ窓口 cbi-info[at]atr.jp *[at]を@に置き換えて送信下さい。


主催:ATR脳情報解析研究所
問合わせ窓口: cbi-info[at]atr.jp *[at]を@に置き換えて送信下さい。
謝辞 : 本研究会は防衛装備庁が実施する安全保障技術研究推進制度JPJ004596、情報通信研究機構(NICT)の委託研究209番の支援により実施するものです。